スパダリ部長に愛されてます
賢二side

つい先週のことだった。
はじめて、古谷さんからヨガレッスンを受けた翌週、
プライベートの思考の8割以上が古谷さんでいっぱいになっていた時のことだ。

休憩室でコーヒーを飲みながら、上がってきたプレゼン資料のチェックをしていた。
でも、半分以上は、
「洋子は可愛かった。めっちゃ可愛い。
あんなに可愛かったか。
ふと目が合うと、にっこりと笑ってくれる。
めっちゃ可愛い。すぐにでも抱きしめたい。
なんで今まで気付かなかったんだ。」
という思考でいっぱいだった。

「ねぇ、新山君、彼女できた??」
「あ?いや、横田には関係ないだろう。」
1人だと思っていた休憩室に、ふっと横田が現れ、テーブルの反対側に座る。
横田とは学生時代からの知り合いだ。
会社では一線を引いてくれるが、
こうして2人きりになると学生時代のノリで話しかけてきてくれる。
気が置けない仲間の1人だ。

「いーないーな、
私も欲しい~。」
「だから、俺は何も言ってないだろ。」
横田が俺をじっと見てくる。
「洋子ちゃん、洋子ちゃん、洋子ちゃん。」
「おい、なんだよ。」
「顔に書いてあるのよ。」
ひどく真面目な顔で真正面からまっすぐに見つめられた。
俺の顔を指差しながら、
「ほら、ここ、こっちも、あ、こっちも。」
「おいおい。」
虫を払うように、横田の手を払う。

横田がにっこりと笑って、
「うふふふ、あーたり。」
思わず、自分の口元に手をあてて、
これ以上、横田に悟られないように下を向く。

「なんでだ?土曜日、新宿か?」
顔を上げて、横田を問い詰める。
「そんな怖い顔しないでよ。
でも、ふーーーん、土曜日に新宿で会ったわけね。
新宿なんて、誰かに見られてるんじゃないの?
新山君らしくないけど、それほどってことね。」
うんうん、横田が1人で納得している。
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