Restart~あなたが好きだから~
七瀬がオフィスに戻ると、既に若林たちは退出した後だった。
「すみません、お待たせしてしまって。」
「お前の方こそ、こんなに慌てて帰って来たんじゃ、味なんかしなかっただろう。」
「大丈夫です。」
「そうか、じゃ早速出掛けるか。今の若林の話は車の中で話す。」
「畏まりました。」
オフィスを出ると2人は直通エレベーターで地下駐車場へ。この日は、就任挨拶周りなので、公用車に乗り込むと、運転手が車をスタートさせた。
車が地上に出ると七瀬が運転席との仕切りとなるガラス窓を閉める。これで後部座席での会話は、前には聞こえなくなる。
「若林とは相変わらずみたいだな。」
だが圭吾が切り出して来た話題は、七瀬の予想とは違ったものだった。
「主任の時は結構厳しくいろいろ言いましたから。仕方ありません。」
「でも田中は、むしろお前に感謝して、尊敬しているような感じだったが。」
「田中くんは後輩ですけど、若林くんは同期ですから。受け取り方も違うんだと思います。だいたい、私が営業部時代にどれだけみんなに嫌われてたかは、副社長もよくご存知じゃないですか。田中くんが例外なんです。」
七瀬の口調が、だんだん尖ったものになって来たからか
「そうかもしれんな。」
そう言って、圭吾はこの話題を打ち切った。
やがて最初の目的地に到着し、この日の挨拶ラッシュが始まった。専務だった圭吾は、これまでは相手企業の専務とやり取りすることが多かった為、今日会う相手はほとんどが初対面か、せいぜい形式的な挨拶を交わしたことがあるくらいだった。
比較的若い業界と言われるIT業界だが、それでもこの日、圭吾を迎えた各社の副社長はみな彼より10歳以上年長の人物ばかりだった。
そして、自分が挨拶を交わした秘書たちも同年代の人がほとんどいなかったのが、七瀬には意外だった。
社内でもそうだからかもしれないが、そんな年長者相手にも、圭吾は臆することなく、堂々としていた。
(私も見習わないと。)
同席しながら、七瀬は考えていた。
慌ただしく数社への挨拶周りをこなして、この日最後に2人が訪れたのは、(株)ビーエイトだった。
「すみません、お待たせしてしまって。」
「お前の方こそ、こんなに慌てて帰って来たんじゃ、味なんかしなかっただろう。」
「大丈夫です。」
「そうか、じゃ早速出掛けるか。今の若林の話は車の中で話す。」
「畏まりました。」
オフィスを出ると2人は直通エレベーターで地下駐車場へ。この日は、就任挨拶周りなので、公用車に乗り込むと、運転手が車をスタートさせた。
車が地上に出ると七瀬が運転席との仕切りとなるガラス窓を閉める。これで後部座席での会話は、前には聞こえなくなる。
「若林とは相変わらずみたいだな。」
だが圭吾が切り出して来た話題は、七瀬の予想とは違ったものだった。
「主任の時は結構厳しくいろいろ言いましたから。仕方ありません。」
「でも田中は、むしろお前に感謝して、尊敬しているような感じだったが。」
「田中くんは後輩ですけど、若林くんは同期ですから。受け取り方も違うんだと思います。だいたい、私が営業部時代にどれだけみんなに嫌われてたかは、副社長もよくご存知じゃないですか。田中くんが例外なんです。」
七瀬の口調が、だんだん尖ったものになって来たからか
「そうかもしれんな。」
そう言って、圭吾はこの話題を打ち切った。
やがて最初の目的地に到着し、この日の挨拶ラッシュが始まった。専務だった圭吾は、これまでは相手企業の専務とやり取りすることが多かった為、今日会う相手はほとんどが初対面か、せいぜい形式的な挨拶を交わしたことがあるくらいだった。
比較的若い業界と言われるIT業界だが、それでもこの日、圭吾を迎えた各社の副社長はみな彼より10歳以上年長の人物ばかりだった。
そして、自分が挨拶を交わした秘書たちも同年代の人がほとんどいなかったのが、七瀬には意外だった。
社内でもそうだからかもしれないが、そんな年長者相手にも、圭吾は臆することなく、堂々としていた。
(私も見習わないと。)
同席しながら、七瀬は考えていた。
慌ただしく数社への挨拶周りをこなして、この日最後に2人が訪れたのは、(株)ビーエイトだった。