Restart~あなたが好きだから~
翌日。その日の勤務を終えた圭吾は、愛奈と共に奈穂の運転する車の後部座席に身を沈めていた。やがて、車はある建物の前に停まり


「到着しました。」


運転席から奈穂が後部座席の2人に声を掛ける。


「ありがとう。」


と圭吾が答え


「確か4階だったよね?」


確認するように、彼の隣から尋ねる愛奈に


「うん。お店の前で七瀬が待ってるから。」


奈穂は答える。


「わかった。じゃ、行こうか。」


「はい。」


連れ立って、車を降りる2人に


「お気をつけて。」


奈穂は声を掛けると、頷いた2人は、肩を並べて歩き出すと、建物の中に消えた。


(これが仕事絡みじゃなきゃ、お姉ちゃん、もっと嬉しいんだろうにな・・・。)


微妙に距離がある後ろ姿を見送りながら、奈穂は思っていた。それでも親し気に言葉を交わしながら、圭吾と愛奈は目的地に向かう。やがて4階に降り立った2人を


「お待ちしておりました。」


七瀬が恭しく頭を下げて出迎える。


「みなさん、お揃いです。」


「そうか、わかった。」


「ではよろしくお願いします。」


「ああ。」


2人が店の中に入って行くのを見届けると、七瀬はフッと息を吐いた。その後、エレベ-タ-で1Fまで降りた七瀬は、待っていた奈穂の助手席に乗り込んだ。


「お待たせ。」


「お疲れ様、ありがとうね。七瀬はこれから予定ある?」


「ううん。」


「じゃ、お夕飯食べようよ。」


「そうだね。」


話は簡単にまとまり、車をスタ-トさせた奈穂は、そのまま15分程、車を走らせ、現れたレストランの駐車場に入って行く。食事時ではあったが、それほど混雑はしておらず、すんなり席に案内された2人は、手早くオ-ダ-を済ませると改めて、向かい合った。


「でもさ。」


「うん?」


「うまく行くかな?」


「えっ?」


「今更、会社同士のエゴのぶつかり合いで、もしこのコラボがポシャっちゃったら、さすがにお姉ちゃんと氷室さんの責任問題になるよ。なんて言っても、社内にも極秘に進めてきたんだから。」


不安そうな声を上げる奈穂。むろん、姉たちと両社技術陣との会合の行方が心配なのだ。
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