Restart~あなたが好きだから~
次の日1日、もう1度城之内に付いて動き、迎えた4日目。


七瀬が出勤すると、これまで3日間は、自分を待ち受けていた城之内の姿はオフィスにはなく


「最後の2日間は、藤堂さんにメインで動いてもらって、私は基本的には黙っているから。」


という彼女の言葉は本当だったことを思い知らされる。もとより、それは覚悟は出来ていた七瀬はまず、専務のデスクを始めとしたオフィスの清掃を終えると、自分のデスクでパソコンを立ち上げた。昨日1日、動いてみて、広範囲の業務の中で、特に重要なのは、やはり上司のスケジュ-ル管理であると、七瀬は感じていた。


(今はスケジュ-ルもパソコン管理だから、専務と情報共有するのは、ある意味簡単だけど、でもその入力をするのは結局秘書である私。私がミスして、日程を間違えたり、ダブルブッキングなんてことになったら、それこそ会社の信用問題になってしまう・・・。)


営業マンとして、外部との接触、交渉上のトラブルの恐ろしさは嫌と言うほど身に沁みてわかっている七瀬は、パソコン入力業務のやり方と、本日以降の専務のスケジュ-ルを改めて確認する。


(今朝はまず、いきなりお取引先の来訪か。面会場所は第一応接室を抑えてあるし、秘書の同席は必要ないと聞いているから、お茶出しが終わったら、オフィスに戻って、昨日の資料作りの続きをしないと・・・。)


そんなシュミレ-ションをしていると


「おはようございます。」


にこやかな笑顔で、城之内が出勤して来た。


「おはようございます。」


「スケジュ-ル確認、OKみたいね。」


「はい。」


「今日の自分の動きのシュミレ-ションも大切だけど、専務がいらっしゃる前に、メールのチェックはした方がいいよ。」


早速の指摘に


「そうでした、すみません。」


ハッとした七瀬は慌てて、パソコン画面を切り替える。特に処理や報告が必要なメールがないことを確認し終えたところへ、氷室が出社。


朝の挨拶に続いて、この日のスケジュ-ルの確認をしていると、受付から来客到着の連絡が入る。


「失礼します。」


専務に一礼して、デスクを離れた七瀬は、来客の出迎えと案内の為にエレベ-タ-の前に急ぐ。待つこと2分程で、扉が開き、来客が姿を現すと、深々と一礼した七瀬は


「お待ち申し上げておりました、本日はありがとうございます。それではご案内いたします。」


と慇懃に言うと、客を先導して歩き出す。専務秘書藤堂七瀬が本格的に始動した瞬間だった。
< 69 / 213 >

この作品をシェア

pagetop