Restart~あなたが好きだから~
「俺は若林に感謝している。」
帰りの車の中、氷室の話は続く。話している内に、いつの間にか閉店時間になり、自宅まで送って行くという氷室に、七瀬は申し訳ないと遠慮したのだが、俺が付き合わせたのだから送るのが当たり前だと彼は譲らなかった。
「若林は、在学期間は被ってないが、大学の後輩になる。俺は大学時代にあるサークルを作って、さすがに最近は忙しくて、すっかり足も遠のいてしまったが、しばらくは卒業後も創立者としてたまに顔を出していて、アイツとはそこで知り合った。俺がプライムシステムズの社長の息子だと知ると、必死におべっかを使って近付いて来たよ。ちなみにアイツの名誉の為に言っておくが、奴がウチに入社したのは俺のコネじゃない、一応実力で入社して来たんだ。だって口をきいてやるほど、俺はアイツのことは買ってなかったからな。」
そう言って氷室は笑う。
「でもまぁ胡麻をすられて、悪い気はしないし、悪い奴ではないから、それなりに可愛がってやって、現在に至っている。奴の方も俺に目を掛けられていると思っているんだろう。何かと俺に頼ったり、甘えたことを言って来るのを、まぁまぁ適当にあしらって来たんだが、そんな奴がこの前持ち込んで来たのが、七瀬のパワハラの件だ。」
「若林くんは直接専務に、私のことを・・・。」
「ああ、よっぽどお前が目障りだったんだろうな。人事部やコンプラ室の頭越しに訴えて来やがった。普段ならそんなショ-トカットなんか相手にもしないんだが、今回は俺の方にも思惑があったから、聞いてやることにした。」
「思惑?」
「優秀な営業マンであることはある程度、認識はしてたが、お前のことを、そんなに詳しく知っているわけじゃなかったから、この際、徹底的に調べてみようと思ってな。」
「専務・・・。」
「そして俺はこうしてお前を秘書として迎え入れた。結果として、お前という人材に巡り会わせてくれた若林を、俺はお礼の意味でお前の後任に昇格させたんだ。」
ここまで聞いていた七瀬は、ついに堪りかねたように
「専務。そこまで私のことを買って下さってることには、素直に感謝いたします。ですけど、先ほど専務もおっしゃった通り、『バディ』という言葉の意味は『相棒』です。会社の取締役であり、近々NO2に昇格され、近未来にトップになられる専務の相棒が入社4年目の、一介の女子社員に過ぎない私に務まるはずはありません。それにもう1つ、言わせていただければ、若林くんに私の後任が務まるとも思えません。今回の人事は専務の為にも、会社の為にもならないと思います。ですから、今からでも遅くありませんから、この人事は撤回されるべきです。」
訴えるように氷室に言った。
帰りの車の中、氷室の話は続く。話している内に、いつの間にか閉店時間になり、自宅まで送って行くという氷室に、七瀬は申し訳ないと遠慮したのだが、俺が付き合わせたのだから送るのが当たり前だと彼は譲らなかった。
「若林は、在学期間は被ってないが、大学の後輩になる。俺は大学時代にあるサークルを作って、さすがに最近は忙しくて、すっかり足も遠のいてしまったが、しばらくは卒業後も創立者としてたまに顔を出していて、アイツとはそこで知り合った。俺がプライムシステムズの社長の息子だと知ると、必死におべっかを使って近付いて来たよ。ちなみにアイツの名誉の為に言っておくが、奴がウチに入社したのは俺のコネじゃない、一応実力で入社して来たんだ。だって口をきいてやるほど、俺はアイツのことは買ってなかったからな。」
そう言って氷室は笑う。
「でもまぁ胡麻をすられて、悪い気はしないし、悪い奴ではないから、それなりに可愛がってやって、現在に至っている。奴の方も俺に目を掛けられていると思っているんだろう。何かと俺に頼ったり、甘えたことを言って来るのを、まぁまぁ適当にあしらって来たんだが、そんな奴がこの前持ち込んで来たのが、七瀬のパワハラの件だ。」
「若林くんは直接専務に、私のことを・・・。」
「ああ、よっぽどお前が目障りだったんだろうな。人事部やコンプラ室の頭越しに訴えて来やがった。普段ならそんなショ-トカットなんか相手にもしないんだが、今回は俺の方にも思惑があったから、聞いてやることにした。」
「思惑?」
「優秀な営業マンであることはある程度、認識はしてたが、お前のことを、そんなに詳しく知っているわけじゃなかったから、この際、徹底的に調べてみようと思ってな。」
「専務・・・。」
「そして俺はこうしてお前を秘書として迎え入れた。結果として、お前という人材に巡り会わせてくれた若林を、俺はお礼の意味でお前の後任に昇格させたんだ。」
ここまで聞いていた七瀬は、ついに堪りかねたように
「専務。そこまで私のことを買って下さってることには、素直に感謝いたします。ですけど、先ほど専務もおっしゃった通り、『バディ』という言葉の意味は『相棒』です。会社の取締役であり、近々NO2に昇格され、近未来にトップになられる専務の相棒が入社4年目の、一介の女子社員に過ぎない私に務まるはずはありません。それにもう1つ、言わせていただければ、若林くんに私の後任が務まるとも思えません。今回の人事は専務の為にも、会社の為にもならないと思います。ですから、今からでも遅くありませんから、この人事は撤回されるべきです。」
訴えるように氷室に言った。