Restart~あなたが好きだから~
「女子とか男子とかは、この際、関係ないと思うが?」


「私は周りからバリキャリなんて言われてますけど、私は自分の能力にそんなにうぬぼれることなんて出来ませんし、仕事一筋に生きて行く覚悟を持ってるわけでもありません。」


「恋愛に興味を持ってないはずの七瀬とは思えない発言だな。」


からかうように言った氷室の言葉に、七瀬は少しムッとしたような表情を浮かべたが


「七瀬、俺だって自分自身が目の前に近付いている副社長の器か、いずれこの会社のトップに立てる器かなんてわからん。だが俺は否が応でも、さっきお前の言った路線のレールに乗せられた。降りることも逃げることも許されない、であるなら、俺がやるべきことは、自分をその地位にふさわしいまでに高め、成長させる努力をし続けることだ。そして、その相棒として、俺はお前を選んだ。」


という言葉を聞いて、今度はハッとしたように氷室を見る。


「今すぐお前が俺のバディになれるなんて思ってないし、今のままで若林に、七瀬の後任が務まるとも思えん。だが、自分を高め、与えられた役割や課題にひるまずに挑んで行く意欲を失わない限り、人は成長する、成長する可能性がある。俺はお前となら、お互いに競い合い、助け合い、励まし合いながら一緒に成長していけると思った。だからお前を選んだんだ。」


「専務・・・。」


「この俺の思いは、お前にとっては重いし、迷惑かもしれない。だが俺は藤堂七瀬という社員を、そう見込んで、自分の手元に呼び寄せたんだ。自分で言うのもなんだが、自分の会社の次期社長候補に、ここまで惚れ込まれたんだ。覚悟を決めて、俺の側にいろ。」


そう決めつけるように言われて


「わかり、ました・・・。」


七瀬は頷いた。頷くしか出来なかった。そんな七瀬の仕種を見て満足したように笑みを浮かべた氷室は


「じゃ、改めて明日から頼んだぞ。いいか七瀬。将来、俺が社長になった暁には、お前は取締役だからな。」


とうとう凄いことを言い出した。


「ええ!」


これにはさすがに仰天した七瀬だが


「俺のバディになるってことは、そういうことだ。お前なら出来る、とにかく恋愛に興味がないお前となら、長い付き合いが出来そうだからな、ずっと俺のバディでいろ。いいな。」


と言い放って、氷室は楽しそうに笑う。


(言いたいこと言って・・・この人、どこまでが本気で、どこまでが私をからかってるのかわからないよ。)


そんな専務を見て、七瀬は正直困惑していた。
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