成瀬課長はヒミツにしたい
 専務の言葉に、真理子は思わず「え?!」と声を上げる。

 まさか、自分と成瀬が不在の時を狙ったかのように、あの写真がバラまかれているとは思いもしなかった。


「そう、君も災難だったなぁ。今、フロア内は大騒ぎになっとるぞ」

 目を細める専務の様子を見ながら、真理子は目眩がしてふらふらと机に寄り掛かった。

 その様子を見て、成瀬が咄嗟に駆け寄り、真理子の身体を支える。


「成瀬くん。君は本当に騎士(ナイト)だねぇ。彼女のことも、この友人の事も庇おうというのか」

 専務は秘書と目を合わせると、あざ笑うかのように肩を揺らした。

 そしてチラッと常務に顔を向ける。


「常務は、ご存じだったのでは?」

 専務の声に、真理子は驚いて目を丸くすると、思わず常務の顔を振り返る。

 常務は静かに目を閉じたまま動かない。


 ――どういう事? なんで常務が関係あるの……?


 真理子は何が起こっているのか、訳が分からなくなっていた。
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