成瀬課長はヒミツにしたい
 何も答えない常務の様子に、専務は再び「ふん」と鼻を鳴らす。

「まあ、いいだろう。せいぜい自分たちで、社内を騒がせた後始末をつけるんだな。私は高みの見物とさせてもらうよ」

 専務はそう言い捨てると、大きな音を立てて扉を開け、会議室を後にした。

「と、柊……成瀬課長……」

 真理子は慌てて言い直すと、成瀬の顔を見上げる。


 成瀬は一旦目を閉じると、深く息を吐いた。

「成瀬。突然専務に呼ばれてここへ来たんだが、これはいったいどういう事なんだ?!」

 人事部長も、状況が全くわからないという顔をする。


 成瀬はパークで起こった出来事を、常務と部長に説明した。

「内容からして、このビラを作ったのは橋本さんでしょう。目的は私の地位を(おとし)めること。ただ、専務の意図は違うような気がしました……」

 成瀬はそう言いながら、チラッと常務の顔を伺う。
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