成瀬課長はヒミツにしたい
「えっ?!」

 目線の先には、背の高い成瀬の足にすがりつくように立っている、可愛らしい女の子。

 女の子は、目を丸くして固まっている真理子に首を傾げた。

「とうたん。だぁれ?」


 ――と、とうたん……? とうたん……。


 しばらく脳内でぐるぐると回っていた言葉が、ぴかっと光って浮かび上がった。


「《《父たん》》?!」


 真理子はのけ反り、あからさまに動揺しながら上ずった声を出す。

 そして成瀬と女の子を交互に見たのち、くるっと背を向けると、ダッシュでその場を逃走した。


「ちょっと!」

 後ろから成瀬の呼び止める声が聞こえたような気がしたが、ここで振り返ってはいけない気がする。


「ど、どういうことー?!」

 真理子の声は、夜の住宅街にこだましていた。
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