成瀬課長はヒミツにしたい
「だっていかにも家政婦って感じでしょ? あの人なら、成瀬課長とどうこうなる訳ないし」

「あたしも成瀬課長と遊園地行きたーい」

「ほんとほんと! 役得だよねぇ」

 女性社員は顔を見合わせると、「ねー」と頷き合っている。

 卓也はその様子に、嫌悪感すら感じていた。


「じゃあな。佐伯」

 同期たちは勝手に話を終わらせると、声を弾ませながら帰って行った。


「好き勝手言いやがって」

 卓也は舌打ちを打つと、コーヒーの缶をゴミ箱に投げ入れ、フロアへと戻る。

 今日は夜中に一人で作業する予定だ。

 扉を開けると、フロアにはもう誰の姿も残っていなかった。


 しーんと静まり返り、パソコンのファンの音だけが響くデスクに戻る。

 ふと、真理子の机に目をやった時、ガチャリと静かに入り口の扉が開く音が聞こえ、卓也はビクッと振り返った。

「……専務?」

 秘書と共に、おもむろにこちらへ近づいてくる姿に、卓也は思わず目線を泳がせた。
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