成瀬課長はヒミツにしたい
「いやいや、遅くまでご苦労だね。ちょっと君に話があってね」

 専務はそう言うと、不敵な笑いを浮かべた。

「俺……じ、自分にですか……?」

 まだ新人の卓也は、専務と面と向かって話をすることなど、今まで経験したことがない。

 卓也は戸惑った顔つきのまま、その場に直立していた。


 専務は空いた椅子にドカッと腰を下ろすと、卓也に手で椅子をすすめる。

 卓也はちょこんと浅く、椅子に腰かけた。

「昼間は見苦しいところをお見せしたね」

 専務は大きく笑うと、髪を撫でつけた頭に手をやる。


「君の人事考課の評価表を、見せてもらったよ。君はなかなかに優秀だそうじゃないか」

 専務は手に持っている評価表をひらひらさせた。

「オンラインショップの立ち上げの時は、君がパイプ役になって取りまとめたそうだね」

「恐縮です……」

「それにしては……今一つ、評価が伴っていない気がするんだがね」

 卓也は専務の話の意図がつかめずに、小さく首を傾げる。
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