成瀬課長はヒミツにしたい
　――もしかして、私が昨日逃げだしたから？　柊馬さん、私の気持ちを知って、わざと会わないようにしたの？


　「それは……成瀬課長の希望ですか……？」

　うつむきがちに聞く真理子に、社長は「うーん」と困ったように頭をかいている。


「柊馬の希望っていうより、乃菜の希望……みたいな？」

　社長は少し照れた顔をすると、あははと笑った。

「乃菜ちゃんの？」

「そう。あ、でもね。柊馬に人事部とは別件で、仕事を依頼してるのは事実なんだ。ちょっと急ぎで顧客分析をしたくってね。この件は、システム部の佐伯くんにも手伝ってもらう予定だよ」

「そうなんですね……」

「それで、家政婦の件なんだけど、お願いできる？」

　社長が可愛らしく首を傾げる。


　真理子はその様子に、思わずぷっと吹き出した。

「わかりました。お引き受けします。もう、社長なんだから、もっとエラそうにしてくださいよ！」

　声を上げて笑う真理子の様子を、社長は嬉しそうにじっと見つめていた。
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