成瀬課長はヒミツにしたい
 着替えをすませた乃菜は、カウンターから身を乗り出して、笑顔で真理子を覗き込んでいた。

「乃菜ちゃん。今日のお夕飯は何か希望のものある?」

 真理子はわざと明るい声で、乃菜に声をかけた。

「のな、ハンバーグがいい! チーズがのってるの。あのね、パパもハンバーグ大すきなんだよ」

 乃菜は目をキラキラさせながら、嬉しそうにほほ笑んでいる。

「ハンバーグね。オッケー。じゃあ、社長の分も作っておこうね」

「うん!」

 乃菜は元気に返事をすると、スキップしながらリビングに向かった。


 真理子はその様子を目で追った後、そっと冷蔵庫を開ける。

 すると目に飛び込んできたのは、成瀬がしまっていた使いかけの食材や、作り置きのおかずだった。

 真理子は途端に、胸がキュッと苦しくなるのを感じながら、ガラス製の保存容器を一つ取り出す。

 中に入っているのは、トマトとツナのマリネだった。
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