成瀬課長はヒミツにしたい
 ――ライバルって、何だろう?


 乃菜の背中に向かって声を出しながら、真理子は首を傾げた。


 部屋に入ると、早速夕飯の支度のためにキッチンに向かう。

 乃菜は洗面所に向かった後、そのまま自分の部屋に入ったようだ。


「すぐに準備しなくっちゃ」

 独り言を言いながらキッチンに入った真理子は、ラックに無造作に置かれた成瀬のカーキ色のエプロンに目が止まる。

 真理子はそのエプロンを取り上げると、そっと優しく指で撫でた。

 成瀬の佳菜への想いを知ってしまった今、ここで一緒に家政婦をするのは心が辛すぎる。


 ――きっとこれで良かったんだ。柊馬さんの側にいなければ、いつかきっとこの気持ちにも区切りがつく。


 真理子は自分に言い聞かせるように手に力を入れると、エプロンをラックに戻した。


「まりこちゃん!」

 すると突然、背中で大きな声が聞こえ、真理子は慌てて振り返る。
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