成瀬課長はヒミツにしたい
「社長がここにいらっしゃるのが、まだ慣れなくて……」

 真理子は正面から社長を見て良いものか、居心地が悪そうに下を向く。

「そう? 俺は真理子ちゃんが、ここにいるのは、すごく自然だよ」

 社長は真理子のそんな様子は気にしていないようだ。

「そうですか……?」

「ずーっといて欲しいくらい!」

「え?!」

 真理子は社長のノリについていけず、戸惑ってしまう。


 ――社長ってこういうタイプだったの?!


 困惑する真理子をよそに、社長は身を乗り出して、真理子の顔を覗き込んだ。


「ねぇ、真理子ちゃんは彼氏とかいるの?」

「ま、まさか! い、いないですよ」

 真理子は背中を反らせると、両手を大きく振った。

「本当に? じゃあ好きな人は?」

 ワインのせいなのか、真理子の想像以上に社長はぐいぐい押してくる。


「好きな人は……」

 そう口に出した途端、頭に成瀬の顔が浮かび、真理子は一瞬口ごもった。
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