成瀬課長はヒミツにしたい
 社長の少年のような顔を思い出し、真理子はふふっと肩を揺らした。


 ――社長のおかげで、ちょっと気持ちが軽くなったな。


 真理子は足取りも軽くフロアに戻って行った。

 デスクに戻った真理子は、ふと卓也がまだ出勤していないことに気がつく。

 ここ最近は遅刻ギリギリに飛び込んでくることも少なくない。


「部長、卓也くんが関わってる案件って、そんなに大変なんですか?」

 カップをそっとデスクに置くと、真理子はシステム部長の顔を覗き込んだ。

 部長はパソコンの脇から、にゅっと丸い顔を見せる。

「なんでも成瀬くんと一緒に、データ抽出だけじゃなくて、分析までしてるらしいよ。だからかなぁ。残業も多いんだよね」

「ふーん」

 真理子は、部長に軽くうなずきながら目線を戻した。


 卓也がどんな業務を依頼されているのかは、真理子は聞かされていない。

 でもそこまで忙しい案件なら、成瀬が家政婦に入れないのも納得できる。
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