成瀬課長はヒミツにしたい
 淡々と話す成瀬の後ろ姿を、ぼんやりと見上げた。

 電話の相手はシステム部長だろうか?

 真理子は話の内容がわからないまま、ただ成瀬の低い声をじっと聞いていた。


「そうですか。わかりました……」

 しばらくして、成瀬は受話器を置くと、眼鏡を外して一旦目元をぐっと押さえる。

「……どうしたんですか?」

 恐る恐る聞く真理子に、成瀬は静かに息を吐いた。


「佐伯は、今日は出社していない……。無断欠勤だ」

 眼鏡をかけながら振り向いた成瀬の厳しい声に、真理子の全身に衝撃が走った。


 ――このタイミングで、無断欠勤?!


 これでは疑ってくださいと言っているようなものではないか。

 目を見開いたまま呆然とする真理子の横で、成瀬はもう一本電話を入れている。


「はい……では、これから伺います」

 電話を切った成瀬が、ゆっくりと真理子の側に寄った。
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