成瀬課長はヒミツにしたい
 真理子は、いても立ってもいられなくなり、社長の背中に手を回すとぎゅっと力を入れる。

「大丈夫です。もう安心して……」

 真理子の声に、社長の呼吸が次第に穏やかになっていく。

 真理子は、社長の背中を何度もゆっくりとさすった。


「社長はたった一人で、大勢の人の疑惑の目に立ち向かってくれた。ちゃんと説明してくれた。その姿は本当に立派でした。社長なら、お客様の信頼も、必ず取り戻せると思っています。だからもう、安心してください……」

「真理子ちゃん……」

 次第に社長の身体から震えが止まり、力が抜けていく。

 社長は真理子の両肩に手をかけると、ゆっくりと身体を離し、真理子の顔を正面から見つめた。


「ありがとう」

 社長の声に、真理子は目じりの涙を拭いながらほほ笑んだ。

「真理子ちゃんがいなかったら、この危機は乗り越えられなかったと思うよ」
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