成瀬課長はヒミツにしたい
　うつむく真理子の頭にポンポンと触れながら、成瀬は唸り声をあげる。

　真理子は成瀬の腰に手を回すと、ぎゅっと力をこめた。


「現実問題、仮に電飾玩具を残すことになったとしても、明彦が言ってたように、今の生産工場の態勢じゃ両方を製造することはできない。その問題もクリアしないと先には進めない。結局は感情論だけじゃ、どうにもならないってことだ」

「課題は、二つあるってことですね……」

　真理子は顔を上げると、下から成瀬の顔を見上げる。


　こんな時でも冷静に状況を判断する成瀬に、真理子の頭の中も次第に整理されていく。

　どこかで、電飾玩具がなくなるかもしれないという、不安でいっぱいだった心の中が落ち着いてくるようだった。


　――そうか。一番、感情的だったのは、私かも知れない。


　真理子は身体を起き上がらせると、成瀬を正面から見るようにソファに座り直した。
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