成瀬課長はヒミツにしたい

立ち上がる

「創業記念のイベント?」

 小宮山の声が、広い会議室に響く。

 真理子は、首を傾げる小宮山と、じっと腕を組んだままの成瀬の顔を交互に見ながら、ついさっき見つけたスクラップブックを机に置いた。


「今年、サワイは創業40周年ってご存じでしたか?」

「え? そうなの?!」

 小宮山は身体をのけ反らせると、素っ頓狂な声を響かせる。

 真理子は小宮山の隣に座る成瀬に目を向けた。

「いや、知らなかった……」

 成瀬が小さく首を横に振り、真理子は大きくうなずく。


「知らなくて当然なんです。小さな電飾玩具の会社だったサワイは、今までそういった記念イベントなんて、してきませんでした。会社設立日は調べればわかりますが、誰も気にしてこなかった。当然、創業がいつかも知りません」

「それがここに書かれてるっていうの?」

 小宮山の声に、真理子はうなずく。

「“創業”っていう言葉は、事業を始めた時のこと言うのは、ご存じだと思うんですけど……」
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