成瀬課長はヒミツにしたい
「これって……」

 文字を目で追っていた真理子は、はっとして目線をストップさせる。


 その時、入り口の扉が開いた。

「おはよう。水木さん早いなぁ」

 あくび交じりの小宮山の声が、遠くで聞こえる。

 真理子は急にバッと立ち上がると、出社してきたばかりの小宮山に詰め寄った。


「小宮山さん。ちょっと相談したいことがあるんですけど!」

「へ? 今?」

「はい。今すぐにです!」

「なんか嫌な予感がするなぁ……」

 真理子は、そっと逃げようとする小宮山の腕をぐっと掴んだ。


 ぎょっとした顔の小宮山の腕を握ったまま、社内スケジュールで会議室の使用をおさえる。

 その手で受話器をあげると、人事部に内線を入れた。

 呼び出し音は一回鳴っただけで、心地よい低い声が耳元をかすめる。


「今すぐ、打ち合わせをお願いできませんか?」

 真理子の張りのある声に、成瀬は一瞬、面食らった様子だったが、すぐに了承してくれた。
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