成瀬課長はヒミツにしたい

もう一つの課題へ

 電車の心地よい揺れを感じながら、リズミカルに動くつり革をぼんやりと見つめる。

 まだ帰宅ラッシュまでは時間があるためか、電車の中は閑散としてゆったりとした時間が流れていた。


「先代は、ずっと社長の事を気にかけてたんですね……」

 真理子は、隣でティアラの設計図を見つめる成瀬に声をかける。

「……そうだな」

 何か考え事でもしているのか、成瀬の返事は遅れて聞こえてきた。


「なぁ、真理子」

 しばらく沈黙が続いた後、成瀬が口を開いた。

「お前だったら、この設計図どうする?」

「え?」

 真理子は、成瀬から手渡された設計図をじっと見つめた。


 この設計図を書いた当時、先代も一度は製品化を試みたらしい。

 でもその頃にはサワイの経営は厳しくなっており、新製品を製造する体力は残っていなかった。

 そして設計図だけを常務に託し、先代は病で亡くなったのだ。


「私だったら……」

 真理子は紙を握る手に力を入れると、成瀬の顔を見上げた。
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