成瀬課長はヒミツにしたい
「私だったら、形にしたいです。そして、乃菜ちゃんに付けてあげたい」

 成瀬は真理子の顔を見つめると、力強くうなずく。

「俺も同じだ。この設計図に書かれたものは、形になってこそ意味がある。他の件と合わせて、先方に相談してみよう」

 成瀬はそう言うと、ぐっと真理子の手を握り、座席を立ち上がった。

 電車が、委託先の町工場がある最寄り駅についたのだ。

 真理子も勢いよく立ち上がると、成瀬の後に続いてホームへと降り立った。


 町工場は静かな住宅街の中に、ひっそりと建っていた。

 一見すると他の住宅との見分けがつかないが、入り口の奥に縦長に敷地が広がっているようだ。

 大きな鉄の引き戸は少し開いていて、外からでも中の様子が見渡せる。

 数名の作業着姿の人たちが黙々と手を動かす様は、昔ながらの町工場という雰囲気だ。

 自社工場の時と同じように、低いガシャンガシャンという機械音が、風に乗るように外に漏れ聞こえてきた。
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