成瀬課長はヒミツにしたい
 悩んだ様子で髪をくしゃくしゃと触る卓也を見ながら、真理子は身を乗り出すように立ち上がった。

「その仕事、私が手伝う!」

「え?!」

「真理子、何を……」

 卓也と成瀬が同時にぎょっとした声を出す。


 真理子は自分自身に納得するように、何度も大きくうなずいた。

「有給とか調整すれば何とかなると思う。卓也くん、しばらくここに出勤してもいい?」


 人手が足りないなら、自分が手伝えばいい。

 今までだって、仕事と家政婦を掛け持ちしていたのだ。

 工場の仕事の掛け持ちだってできるはずだ。


 ――それで、乃菜ちゃんと社長に先代の想いを伝えられるなら、できることは何だってやりたい。


 すると急に、成瀬の大きな笑い声が聞こえ、真理子は驚いて隣を振り返った。

 成瀬は額に手を当てると、優しい笑顔で真理子を見つめている。

「発想が、真理子らしいな。でも、俺も賛成だ……」

「柊馬さん!」

 真理子はパッと笑顔になると、成瀬に飛びつく勢いで腕を掴んだ。
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