成瀬課長はヒミツにしたい
 デスクの上には片付けや収納に関する本から家事全般、レシピブックまで、山のように積まれている。

 どう考えても、秘書の仕事には関係がなさそうだ。


「えっと、志賀さんは何か資格でも取るの?」

 明彦は一番上に積んである“あなたも今日から収納アドバイザー”と書かれた本を手に取った。

 夏美は、ドキッとした様子を見せると、真っ赤になった顔で慌てて明彦から本を取り上げる。


「ば……抜擢(ばってき)されるかも……知れないので」

「ん? 何の?」

「か、家政婦の……」

「はい?」

「だから……社長の家政婦に、いつなってもいいように勉強してるんです!」

 勢いよく立ち上がり、肩を怒らせて仁王立ちになった夏美に、明彦と小宮山はビクッと背中をのけ反らせた後、顔を見合わせる。


「す、す、す、すみません……」

 夏美は、はっと我に返ると、慌てて本を引き出しにしまった。

 真理子と成瀬が家政婦代わりをしていて、それが真理子の産休と共に終了することは、社内でも噂になっている。 

 ――それで、志賀さんも家政婦をする心づもりってこと?

 明彦は頭をかきながら、夏美に目をやった。

 真っ赤になった夏美の横顔は、とても可愛らしい。

 明彦は小さくほほ笑むと、ぼんやりと夏美の横顔をいつまでも見つめていた。
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