成瀬課長はヒミツにしたい
 真夜中の病院の廊下を、出口へ向かって三人でゆっくりと歩く。

「本当に、素敵でした……」

 夏美は噛みしめるように声を出した。

「そうだね」

 明彦はそっと隣を歩く、夏美の横顔を見つめる。

「また三人で、会いに来ようか」

 明彦が小さく夏美の耳元でささやくと、夏美は目をまん丸に見開き、顔を真っ赤にしながら全力でうなずいた。

 その様子に、明彦はまたぷっと吹き出す。


「ねえ、パパ。私、お腹すいた……」

 反対の隣からは、乃菜のあくび交じりの声が聞こえてきた。

 明彦は両手を広げると、夏美と乃菜の肩をぎゅっと抱きしめるようにかかえる。

「じゃあ、三人で遅い夕飯でも食べに行こうか!」

「うん! あ……でも、お姉さんの車はなぁ」

 乃菜がニヤリと口元を引き上げると、横目で夏美を見る。

「の、乃菜ちゃん! 大丈夫です。帰りは安全運転でいきますから……」

 夏美は大袈裟すぎるガッツポーズをつくった。

「あやしいー」

 三人の楽しそうな笑い声は、いつまでもいつまでも続いていた。



おしまい
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