成瀬課長はヒミツにしたい
 あの時はその意味が何なのか、聞くことができなかった。


 ――でも、今だったら……。


 真理子は成瀬の腕をぐっと引っ張ると、顔を覗き込ませる。

「もしかして、それって……」

 すると真理子の声を遮るように、扉の奥の会場から音楽が漏れ聞こえだした。


「ん? 何だっけ? ほら、始まるぞ」

 成瀬ははぐらかすようにそう言うと、わざと姿勢をぴんと伸ばす。

「もう! 柊馬さんったら」

 頬を膨らませた真理子の顔をチラッと見た成瀬は、急に真理子を抱き寄せると耳元に唇をあてた。


「教えてあげようか」

「え?」

 真理子は吸い込まれそうなほど真っ直ぐな、成瀬の瞳を見つめる。


「真理子……愛してる」


 突然の甘いささやきに、真理子は今にも卒倒しそうだ。

「と、柊馬さん!」

 顔を真っ赤にして叫ぶ真理子をよそに、成瀬は何事もなかったかのように飄々(ひょうひょう)と前を向く。

 真理子は目眩がするほど、成瀬をジトっと睨みつけた。


 あぁ、もうダメだ……。

 きっとこの人には、ずっと敵わない。

 真理子は茹でだこのように真っ赤になった頬で、にんまりと笑った成瀬の横顔を見上げた。


 やっぱり成瀬課長には、ヒミツが似合っているらしい。


おしまい
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