成瀬課長はヒミツにしたい
「俺はA案がいいな。柊馬もそう思うだろ?」

 成瀬の横からデザイン案を覗き込む男性。


 ――なんだか優しそうな、爽やかイケメン。こんな人、社内にいたっけ?


 真理子が首を傾げながら様子を伺っていると、にっこりとほほ笑んだ男性と目が合った。

 どこかで見たことがあるような笑顔だ。


「まぁ、そうですね。社長がそう言うのであれば……」

 その時、成瀬の冷静な声が聞こえ、真理子と卓也は思わず顔を見合わせる。

「え?!」

「社長?!」

 社長は、ふんわりと揺れる柔らかそうな前髪に手をかけると、にっこりとほほ笑んだ。


 ――社長って、こんなに若い人だったんだ……。


 噂では、社長は国内外を忙しく飛び回っており、普段フロアの奥のシステム部で仕事をしている真理子は、顔をまともに見たこともなかった。

 以前チラッと廊下で見かけただけの、社長の後姿を思い出す。
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