成瀬課長はヒミツにしたい
「新チームの二人だよね? オンラインショップの件、よろしくね」

 社長は親しげに明るくそう言うと、ふと真理子の顔を覗き込んだ。

「え? は、はい。がんばります……」

 突然、社長の爽やかな顔に見つめられ、真理子はどぎまぎとしながら返事をする。

 そっと成瀬に視線を送ったが、成瀬はその様子を横目でチラッと見ただけだった。


「ふーん」

 社長は顎に手を当てると、にっこりと真理子にほほ笑んだ。

「またね」

 社長は首を傾げる真理子から目をそらすと、片手を上げて軽やかにフロアを出て行く。

 社長が去ったその場には、不思議な存在感と爽やかな香りが残っていた。


 ぼんやりと社長の後姿を見送っていた真理子の耳に、成瀬の大きな咳ばらいが聞こえる。

「では。そういうことですので、佐伯くんは先を進めてください」

 ぴりっとした成瀬の低い声が打ち合わせスペースに響き、真理子は慌てて視線をフロアから戻した。
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