間違ってる?間違ってない?
22. 両親と話しを聞く

考えもまとまらずに一週間が
過ぎた時に鬼頭弁護士から
連絡があった。

家の両親と一緒に鬼頭さんの
事務所へと行く
美穂も訊きたいと言う事で
家の母親と一緒に来ていた。

鬼頭さんから
ご自身の紹介があり
俺の方から両親と美穂の紹介をした。

美穂の所で、鬼頭さんが顔を
少し動かす仕草をしたが·····

「それでは。」
と、鬼頭さんが言われて

「甲斐さん。
離婚届に記載されましたか?」
と、訊ねたから
「また、記入していません。」
と、答え
「夏帆と一度話しをすることは
出来ませんか?」
と、言う俺に
「先日も申し上げましたが
夏帆さんは、会いたくないと
おっしゃっていますから
無理です。」
と、鬼頭さん。

「それにしても一方的過ぎませんか?
誕生日に一日、家を開けただけで?」
と、鼻息荒く言う母に

「先日、これも大和さんに
お伝えしましたが
初めに一方的だったのは
大和さんの方ですよね。

いくらでも話しをする機会は、
あったはずです。

大和さんの誕生日を祝う為に
事前準備をした料理。
当日の料理やケーキを焼いて
待つ夏帆さんの料理にため息をつき
『じゃ、行ってくるから
夏帆もゆっくりして』
と、だけを言って
出ていかれた、そうですね。
大和さん、間違いないですか?」
と、言われて
「·····はいっ·····」
と、答えると
「どうですか?一方的なのは
どちらですか?」
と、母・絹恵へ 
顔を向けて問う鬼頭さん。

更に
「お母さんが、同じ事を
ご主人にされたら?
いかがですか?
まだ、結婚したはがり
初めての夫の誕生日
プレゼントも悩みながら決め
料理も用意して
喜んでくれるかな
と、思いながらいたら
どこにいくのかも
知らされずに
ゆっくりしろ?
まして、一生懸命作った
料理にも ため息疲れて
夏帆さんが、悪いのですか?」
と、言われて
母も返す言葉がなかった。

鬼頭さんは、その後の夏帆の
行動を話してくれて始めて知った。

何が起って
どうしてよいか解らずに
実家に電話をして
ただ事ではないと判断した
山城の両親は、
弟との優志君が帰宅していたから
車をだしてもらい
マンションへ向かったと。

山城のご両親は
大和の最初の結婚について
もっときちんと話しをきいていたら
と、悔やんでいる事も話してくれた。

夏帆は、大和の誕生日だけ
前妻の家で両家で祝う
それを自分が、我慢すれば良いなら
子供ができ家族が増えたら
大和と話し合えばよいかとも
悩み考えたらしい

その時にあの電話。

電話は、録音されていて
それを聞かされた。
父・紘は
「馬鹿が。」
と、呟いた。

「夏帆さんは、これで
大和さんへの信頼もなにも
なくなったそうです。
誕生日を一緒に祝いたいのは、
妻である私でなく元嫁。
いまからも何かあれば元嫁の所に
行くかもしれない
そんな疑心暗鬼な気持ちで
一緒にいるほど
自分は強くないと。
それに自分が何か言っても
甲斐家と原田家が認めているのに
無駄だと思ったそうです。
大和さんは、プロポーズの
言葉を覚えていますか?
まだ、そう経っていませんが
『ずっと、一緒にいよう。』
だったそうですね。
一緒にいることを望んでいないのは
大和さんの方だと夏帆さんは、
泣かれていましたよ。

そもそも、大和さんもお母さんも
夏帆さんと考え方が違いますよね。

大和さんもお母さんも
たかだか誕生日如きの考え方ですから

この先、一緒にいても
考え方が違う同士ですから
難しいと思います。

もう、夏帆さんを開放して
貰えませんか?
夏帆さんは、一年も満たない
結婚生活が破綻した事で
苦しんでいます。」
と、言われた。

美穂の鼻をすする音が聞こえる。

静まりかえる部屋······

父・紘が
「本当に申し訳ありませんでした。

甲斐家と原田家の事に
山城家を巻き込んでしまいました。

確かに両家は仲が良く
なんでも両家でやってきました。

大和と美穂ちゃんが結婚している
時はそれで良かったのですが
大和か夏帆さんとの
結婚を決めた時に
きちんと話して置けば良かった。

それは、美穂ちゃんも
同じ考えでした。

まして、今回の事を
何も悪いと思っていない
息子の大和が情けない次第です。

山城さん側からの提示は
このまま受けます。」
と、言い
離婚届の証人欄に
自分の名前を記入して
「大和、書きなさい。」
と、言った。

それでも渋っていた大和だが

美穂と父に再三言われて
やっと記入した。

鬼頭さんは、それを確認して
父・紘にお礼を言った。
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