間違ってる?間違ってない?

···事件後の後遺障?


一緒に勤務している山城は
俺より五歳下だが
しっかりしているし仕事もできる
有望な若手だ。

そんな日々の中

純友銀行 大船支店に強盗
怪我人あり 出動要請がきた

“ さっ ”と、思い横を見ると
動きの止まっている山城がいた
口は何か言っているのか
動いている

身内か?
と、思い
「大丈夫か?」と、声をかける
少し、間があったが
大丈夫の返事があり
現場へと向かう

やはり、非常に口数が少ない

到着すると
行員で女性の方が怪我をしていると

その女性の元にかけつけると
血溜まりがみえた。

放心状態になる山城に
仕事できないなら邪魔だから、どけ
と、伝えると
手は、振るえているが
応急処置をして
ストレッチャーに乗せる事が
出来た。

女性と一緒にいた
高齢の女性が
行員の女性の事をかなり心配して
いた。
その女性に対して
山城は、
「大丈夫ですから
心配されないで下さい。」
と、声をかけていた。

それから、受け入れ先の病院へと
向かい
出迎えた医者、看護師に
行員の女性を引き渡すと
ふらりとした山城を支えた。

山城の両手は、かなり振るえていた。

一度、消防署へと戻ると
「柳田さん、ご迷惑おかけしまして
申し訳ありません。
あの行員は、姉でした。」
と、頭を下げる山城に
「お姉さんか。
動揺するなと言う方が無理だな。
だが、今から先も
きっとある
家族、友人、知人と
無理だと判断したら
直に変われ。
迷うと対応に遅れがでる
そのためにメンバーがいるのだから。」
と、言い
病院まで送る。

振るえが止まらず
車の運転をさせる事は
出来ないと思ったから。

山城は、恐縮していたが
そのくらいの事は、大した事ではない。


病室に入ると
姉弟 仲が良いのがわかる会話に
笑いがでる。

山城の両親とお姉さんに
紹介をされて、挨拶をする。

お姉さんは、夏帆さんと言い
綺麗な方だ。

家族も仲が良いのが見てとれる。

ただ·····

彼女は、自分が動く時に
一瞬、周りを気にする
素振りが見られる。

たぶん·····事件の影響だと思う。

ほんの一瞬だから
家族も気づいているのか····分からない

だから、俺は彼女に声をかけてから
中に入るようにしている。

実は、俺の妹は高校の時に
寮が火事になり
火を見ると動揺する。
皆んな無事だったが
逃げ惑う恐怖と火が結び付いて。

もう10年以上経ち
落ち着いてきているが
大きな炎は、まだ苦手だと
言っていた。

夏帆さんは、
そんな風に
ならないよう願うしかない。

それに
真面目で優しくて気配りができる
彼女に惹かれていた。

彼女には、そんな気持ちは、
無いようで、正直ショックは
受けているが······
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