彼女はアンフレンドリーを演じている




 密かに想いを寄せていた蒼太だけは、美琴の中に隠された笑顔も明るい声も覚えていたし、もう一度取り戻したいと願っていたからこそ。

 今こうして、クリスマスイブの夜に二人きりで過ごせる奇跡を起こす事が出来た。


 その夢のような現実を強く感じながら、そっと後ろから美琴の肩を抱く。



「やっとつかまえたんだ」
「……蒼太くん?」
「もう絶対、離したりしないから」



 そう宣言した蒼太に応えるよう、自分を包み込む腕に優しく触れた美琴が静かに頷くと、胸元のネックレスが光りを浴びて更に輝いたように見えた。

 今まで生きてきた中で一番重く、不変的で大きな愛を今、丸ごと受け取った感覚。



「ありがとう、これからもよろしくお願いします」
「うん、一生よろしく」
「うん……え?」
「遼が保証人になってくれるって」
「……何の話」



 何の話かは見当がついている美琴が口先を尖らせながら呟くと、にやけた顔を浮かべる蒼太の早く結婚がしたい圧が背後から押し寄せてきた。

 そしてもう一回、今度はわざとらしくうなじへと唇を寄せる。



「ちょっ待っ、首はだめ……!」
「ここ弱いんだろ」
「あっ意地悪っ!」
「違うよ、誓ってんだよー」



 そうして戯れ合い始めた二人の笑い声が、イブの夜を明るく飾っていく。



 しかし、この時の美琴はまだ知らない。


 愛する人のうなじへのキスは“守ってあげたい”という意味が込められることを。

 そして蒼太の、いつまでも美琴の笑顔を守り続けるという誓いが込められていることも。





 大好きな笑顔を一生守り続ける。

 そうすることでもう二度と、彼女がアンフレンドリーを演じることはないから――。













Fin.





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