彼女はアンフレンドリーを演じている
スッと立ち上がった蒼太は、美琴を元いた椅子に誘導して座るように促す。
渡したいもの、とは一体なんだろうと美琴が目を丸くしていると。
目の前に現れたのは、丁寧にリボンの巻かれたブランドロゴ入りの長細いボックス。
その誰もが知る有名なブランド名に、思わず驚愕の声を上げる。
「こんな高価な……!?」
「美琴ちゃんに似合うと思ったんだ、開けてみて」
「っ……」
そう言われて恐る恐る上蓋を持ち上げると、箱の中にはオープンハートのネックレスが光っていて。
普段からブランドものを身につけることがない美琴は、少々怯えながら蒼太に視線を向けた。
「そそ蒼太くん、私なんかにこんな、勿体無いよ……」
「何言ってんの、似合うに決まってるって」
「でも、だって」
「いいからほら、俺がつけてあげる」
背後に回った蒼太が箱からネックレスを手に取り、躊躇する美琴の細い首へ優しくつける。
首元へ触れる骨張った指に、何だか恥ずかしくてくすぐったいと感じた美琴は、徐々に耳を赤く染めていった。
その反応に嬉しさを覚えた蒼太がネックレスをつけ終えると、最後に何の前触れもなくうなじへとキスを落とす。
「ひぁっ! なん……!?」
「ごめん、なんかしたくなって」
「〜〜っ」
突然の感触に驚いてうなじを押さえながら振り向いた美琴は、耳だけでなく頬も真っ赤にしていてほんのり瞳を潤ませた。
それがまた、蒼太の心を疼かせるとも知らずに。
「美琴ちゃんがいつまでも俺に心を開いてくれますように」
「え?」
「だから“オープンハート”だよ」
誰にも心を開かなくなってしまった美琴を、冷淡で無愛想だと離れていく人間もいた。
そしてそれは、美琴にとっても好都合だったほんの数ヶ月前のあの頃が、今は遠い昔のように感じる。