彼女はアンフレンドリーを演じている




 秋晴れに恵まれた昼休み。

 会社を出て数分歩いたところにある蕎麦屋へ入った遼と蒼太は、互いに不満そうな表情を浮かべていた。



「遼とランチって、食欲失せるんだけど」
「俺だってもっとセクシーな女の子と食いてえわ」
「じゃあ誘ってくんなよ」
「それがさ〜そういうわけにいかなくてさ〜」


 言っていることとやっていることの差が激しくて半分呆れていると、メニューを見ながら遼が核心をついてくる。



「何かあっただろ、美琴と」
「……何その前提の言い方」
「元気なかったから」
「…………」



 そのセリフに、最近美琴と遼が接触したことを勘繰った蒼太は、ますます不機嫌な顔をした。

 “デート”と言っていたあの日の経緯を聞きたい反面、余裕ねぇな?と思われるのも癪だから。
 最終的に遼と話すことなんて何もないのに、と考えながら、オーダーを聞きに来た店員へ天ぷら蕎麦を注文する。



「あ、俺も同じので」
「…………。」



 何を考えてるのか読めない遼を相手にしながら食べる天ぷら蕎麦は、残念ながら味がしないだろうなとも予想した。



「蒼太ってさ、美琴とどうなりたいの?」
「はぁ? 何だよいきなり」
「いや、結構ずっと前から思ってたこと」
「どうって……質問の意図がよくわかんねぇ」
「じゃあ言い方変える、ヤリたい?」
「……お前、馬鹿だろ」
「蒼太ほどじゃねーから」



 頼んだ天ぷら蕎麦が出来上がるのが先か、それとも怒りが沸点に到達するのが先か。

 見えない試練を与えられて蒼太が眉根を寄せていると、遼がため息をついて頬杖する。



「難しい質問してるつもりはねぇんだけど、蒼太は美琴をどうしたいのか知ってたつもりだから」
「っ…………」
「まあ、俺の見当違いならしゃーないけど」



 まるで蒼太が美琴に好意があると知っているような口振りだったが、試されている気もした。
 加えて、それを知っている上で先日美琴とデートしたのなら、遼は相当性格の悪い男だと蒼太が笑う。



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