White Snow3  前野晴久の苦悩
  ※※※
   
数日後。


俺は智花に梅原さんのことを聞くに聞けずにいた。
「元彼?」
「付き合ってた?」
・・・・・軽く聞ける内容ではない。
一人でぶつぶつと練習した。

俺が智花を意識したあのクリスマスツリーを見た日。
あの日、凍える程に冷たくなった体を知っているから。
俺は智花の弱ってる時に懐に飛び込んできたから。
幸せにすると約束したけれど・・・。

智花が鼻歌交じりに朝食を作っている姿を見る。
楽しそうに見える。
幸せでいてくれてると思いたい。

「おはよう、智花」
「あ、おはよー」

フライパンを持つ智花の横に行き、キスをする。
「ん・・・」

背後からお腹に手を回して抱き寄せると、
「待って。危ないよ。それに、焦げちゃう」

フライパンには好物のフレンチトーストがふわふわと焼かれている。

「あ、おいしそう」
と言うと、智花は嬉しそうに笑った。
「でしょー?だからちょっと離れてて」

「分かった。カフェオレでいい?」
「うん。ミルク多めで」
「了解」

智花から離れて、コーヒーメーカーの用意をした。

コーヒーをマグカップに注いでいると、両手に皿を持ったまま智花が近づいてきた。

「いい香り」
そう言って、俺の腕にするっと体を擦り付けてテーブルに皿を運んで行った。

まるで猫だな。
その可愛らしさと、マーキングに嬉しくなって、口元が緩む。



「熱いよ、気を付けて」
とカフェオレを渡すと、
「ありがとう」
と受け取られた。

「おいしい」
と嬉しそうに笑って、晴久の入れてくれるカフェオレが好きと言うから、俺はご機嫌になるのだった。


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