お兄ちゃんなんて呼びたくない
眉毛を下げて不安そうに聞いてくる。

「違う。……これは、航お兄ちゃんに」

いつもとは違って、どうぞ、と渡す。

受け取った航お兄ちゃんは安心したように肩をなでおろした。

「ありがとう」

その一言が苦しく感じるなんて初めてだった。

ありがとうは言った方も言われた方も幸せな言葉だってずっと思っていたのに。

「私、帰るね」

じゃあ、とブランコから降りると、また手を取られる。
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