轍(わだち)〜その恋はお膳立てありき?
千紘の母、鷹司アンナはオランダで生まれた。

オランダ人の父と日本人の母を持つハーフだったが、アンナの父は若くして死亡。

残されたアンナの母は、オランダの日系レストランで仕事をしながらアンナを育てた。

5歳で小学校に入学するオランダでは、小学生の時代から将来の進学先が決まる。

日本人の母に育てられたアンナはオランダ語が上手く話せず、地元の日本人学校に入学した。

その学校を卒業するまでに、アンナは日常生活に支障のない程度のオランダ語はマスターしたが、地元の大学に編入できるほどの語学力は得られなかった。

アンナの母は独力で日系企業のオランダ支社に派遣され、そこでアンナの父と出会った。

結婚した直後にアンナを授かり、会社を退職。

しかし、アンナが生まれてすぐに夫は死亡。

途方に暮れたアンナの母はかつての同僚を頼った。

やっとの思いでアンナを育てた母。

経済的に困窮しているシングルマザーが娘を日本の大学へ進学させることは難しい。

必然的にアンナも母のコネを使って、地元の日系レストランで働くことになった。

18歳で社会デビュー。

世間知らずのアンナが、初めて恋をしたのが村瀬映二、その人だった。

経済力があり、優しくて包容力のある大人の男性。

父親の愛を知らずに育ったアンナが、百戦錬磨の映二の手中に落ちるのは一瞬だった。
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