轍(わだち)〜その恋はお膳立てありき?
「というか、さっきまで本当に知らなかったんだが、清乃は旧財閥のご令嬢だったんだな」
「言ってないし知らせてないからちいちゃんが知らなくても当然だよ。まあ、滋子は調べてそうだけど。社長だし」
経営者で社長でもある滋子が、いくら自らの利益のためとはいえ、信用のならない人物を大切な会社に採用するとは思えない。
おそらく、隠密春日あたりが、清乃の周辺についてある程度は調べていたはずだ。
そこら辺は社会の常識だし、調べられたからと言って清乃も怒りはしない。
実際に知っていたとしても、滋子も渡瀬も、もちろん春日も、清乃に接する態度に不自然さはなかったから。
「だろうな。あいつらなら全部把握してそうだ。···それよりも」
清乃を抱きしめる腕に力を入れた千紘は、何か言いたそうにしているが口に出せず迷っている様子だった。
「どうしたの?なにか気になることでも?」
「俺は清乃がそんな高貴な出自の人間だとは知らなかった。清乃は良くてもご両親や親戚が俺のことを受け入れてくれるかどうか···」
なんと、ここに来て再びネガティブ千紘のご降臨である。
とはいえ、少ない友人から話を聞いたところによると、一般家庭でも、育ちや価値観の違いから結婚を反対されるカップルも相当数いることを清乃も知ってはいた。
「言ったよね?私は島崎家の遺産相続権は放棄してるって。だから、私が誰とくっつこうと、親戚筋からの横槍は入らないよ」
清乃は、これまでとは逆に、清乃の肩に顔を埋める千紘の頭を優しく撫でながら淡々と言った。
島崎家は元々子だくさんではない。
その上、先の戦争で血縁の数を減らし、近しい親戚で現在残っているのは、清乃の祖父母と伯父夫婦、いとこ、両親、兄だけだった。
「それにね、私の母親は元々交通遺児だったの。事故で両親をなくして施設に入ってたんだけど、そこを出て花屋で働いてたところを父親に見初められて結婚した。二次元テンプレのシンデレラストーリーで笑えるでしょ?」
クスクスと笑う清乃に他意はない。
「そっちの方のテンプレなら大歓迎だな」
顔を上げて清乃を見つめる千紘の表情には、自然と笑みが浮かんでいた。
「私の母には、フラワーアレンジメントの才能があったの。芸は身を助けるっていうでしょ?努力は人を裏切らない、っていうのが父の座右の銘なの。だから、母を見初めた父なら努力家のちいちゃんのこときっと気に入るわ」
「そうだといいな···俺はもうキヨノンなしでは生きていけないから」
手負いの狼犬の弱気な発言に、キヨノンの母性本能が刺激される。
「反対なんてしないとは思うけど、万が一そうなっても、私には隠し財産もあるしなんとかなるよ」
清乃のイケメン発言に、千紘は益々笑顔になる。
イケメンスマイル、エンジェル、ブライスレス···課金。
三次元(リアル)にここまで自分が癒やされ、心惹かれるとは···。
清乃は自分のキャパシティの広さと変化に困惑しながらも、この手負いのイケメン狼犬を絶対に守っていこう、と決意を新たにした。
「言ってないし知らせてないからちいちゃんが知らなくても当然だよ。まあ、滋子は調べてそうだけど。社長だし」
経営者で社長でもある滋子が、いくら自らの利益のためとはいえ、信用のならない人物を大切な会社に採用するとは思えない。
おそらく、隠密春日あたりが、清乃の周辺についてある程度は調べていたはずだ。
そこら辺は社会の常識だし、調べられたからと言って清乃も怒りはしない。
実際に知っていたとしても、滋子も渡瀬も、もちろん春日も、清乃に接する態度に不自然さはなかったから。
「だろうな。あいつらなら全部把握してそうだ。···それよりも」
清乃を抱きしめる腕に力を入れた千紘は、何か言いたそうにしているが口に出せず迷っている様子だった。
「どうしたの?なにか気になることでも?」
「俺は清乃がそんな高貴な出自の人間だとは知らなかった。清乃は良くてもご両親や親戚が俺のことを受け入れてくれるかどうか···」
なんと、ここに来て再びネガティブ千紘のご降臨である。
とはいえ、少ない友人から話を聞いたところによると、一般家庭でも、育ちや価値観の違いから結婚を反対されるカップルも相当数いることを清乃も知ってはいた。
「言ったよね?私は島崎家の遺産相続権は放棄してるって。だから、私が誰とくっつこうと、親戚筋からの横槍は入らないよ」
清乃は、これまでとは逆に、清乃の肩に顔を埋める千紘の頭を優しく撫でながら淡々と言った。
島崎家は元々子だくさんではない。
その上、先の戦争で血縁の数を減らし、近しい親戚で現在残っているのは、清乃の祖父母と伯父夫婦、いとこ、両親、兄だけだった。
「それにね、私の母親は元々交通遺児だったの。事故で両親をなくして施設に入ってたんだけど、そこを出て花屋で働いてたところを父親に見初められて結婚した。二次元テンプレのシンデレラストーリーで笑えるでしょ?」
クスクスと笑う清乃に他意はない。
「そっちの方のテンプレなら大歓迎だな」
顔を上げて清乃を見つめる千紘の表情には、自然と笑みが浮かんでいた。
「私の母には、フラワーアレンジメントの才能があったの。芸は身を助けるっていうでしょ?努力は人を裏切らない、っていうのが父の座右の銘なの。だから、母を見初めた父なら努力家のちいちゃんのこときっと気に入るわ」
「そうだといいな···俺はもうキヨノンなしでは生きていけないから」
手負いの狼犬の弱気な発言に、キヨノンの母性本能が刺激される。
「反対なんてしないとは思うけど、万が一そうなっても、私には隠し財産もあるしなんとかなるよ」
清乃のイケメン発言に、千紘は益々笑顔になる。
イケメンスマイル、エンジェル、ブライスレス···課金。
三次元(リアル)にここまで自分が癒やされ、心惹かれるとは···。
清乃は自分のキャパシティの広さと変化に困惑しながらも、この手負いのイケメン狼犬を絶対に守っていこう、と決意を新たにした。