不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。








「伊都ちゃんを推薦した理由はね?俺が知る限り、伊都ちゃんが誰よりも優しい人だからだよ」


「や、優しくなんてないです私!」


「いつも自分のことより他人を優先するでしょ?図書館で迷子になった子供をさ、苦手だけどちゃんと声をかけてあげてたでしょ?貸してあげてたワイシャツだってあんなに丁寧にアイロンをかけていたでしょ?」


「そ、そんな……っ!それは全然普通のことで」


「普通のことが当たり前にできる人って、実は中々いないんだよ?それにね――……」





律くんは少しの間を空けて、下を向きながら聞き取れるか取れないか程の小さな声で「今回の決勝、多分俺が伊都ちゃんを必要とすると思うんだよね」と言ったような気がした。



けれどこのとき私は自分の身の振り方を考えることにただ真剣になっていて、彼が暗示していた何かに気付いてあげられなかった。


加えて私自身も、これから起こる出来事に対しての不安は持ち合わせていても、予測することは不可能だった。







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