不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。







「――南野、さん」


「……夕夏さん?ど、どうしました?」


「そろそろバスが出るころだから、呼びにきたの」


「あ!そ、そうですね!すみません私、ボーッとしていて」





考えていたことの全てを払拭して、潤んだ瞳を急いで乾かしながら自分の手荷物を持って館内を去ろうと走った。



バスに乗って学校に着いて、みんなに挨拶をし終えたら私は、バスケ部のマネージャーではなくなる。


とっても短い期間ではあったけれど、毎日部員さんたちの活力を間近に見ていて本当に救われることがたくさんあったし、気軽に接してくれる1年のみなさんに笑顔と元気をたくさんもらった。




役に立ちたい一心でがむしゃらにこの2週間を駆けってきたけれど、少しでも今大会の糧になっていれば私の努力も報われたと、そう思いたい。


噛みしめるように、ゆっくりと、この場を出て行こうと大きなガラス扉を開いた。






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