不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。







取られたくなかった、と言って私に吐いた嘘も、今なら理解できる。彼女が私にそう思ったことと一緒、私も夕夏さんに同じようにずっと思っていたから。



本当に人を好きになるって、きっとこういうことだって学べたから。




加えて、夕夏さんが本当は優しい人だということは目に見えて分っていた。


部活の休憩中、いつもお弁当箱の上に私の分の飴を3つ置いていてくれたことも、山ほどあるマネージャー業務もやりやすいように、作業しやすいようにアドバイスをくれたことも、本気でバスケ部のみんなのことが大切で、チーム思いだということも、全部ぜんぶ夕夏さんの人の良さが滲み出ていた。








「だから私、この件の記憶も全部、消しますね」


「南野さん……っ」


「それにたった2週間でしたけど、私では到底夕夏さんみたいな手腕マネージャーにはなれないと痛感しました!あ、でもあまり無理はしないでくださいね。雑用なら私でもできるので、また声をかけてください」





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