御曹司は極秘出産した偽りの恋人を離さない

5 正式な求婚

三日間続いた熱が下がると、光太は少しずつ元気を取り戻していった。

突発性発疹はネットで調べると別名が不機嫌病というだけあって、発疹が消えるまではイヤイヤにグズグズ、食欲なしや睡眠不足と大変だった。

それに、高熱がありぐったりしている我が子の様子は、見ていてすごく辛かった。
できることなら代わってあげたいと何度思ったか数え切れない。

仕事を休んで看病にあたった私は、笑顔で車のおもちゃを乗り回す光太を見て、元気になって本当によかったと心から思った。

ホッと胸をなで下ろし、清都さんになにかお礼をした方がいいかなとちょうど考え始めていた頃。
光太の体調がよくなったのなら家に招待したい、と清都さんから誘いを受けた。

光太は元気になったし、直接会ってお礼を伝えるいい機会かもしれない。
私は清都さんと会う決意をした。

「それじゃあお母さん、いってきます」
「ましゅ!」

玄関で靴を履き、光太は見送る母に笑顔で手を振る。

きっと、お休みの日のルーティンである買い物か公園にでも行くと思ったのだろう。
玄関のドアを開けると真っ先に家の前に停めた自転車に向かう光太を、私は後ろから手を掴んで制止した。

「今日はね、自転車には乗らないよ。車でお迎えに来てもらうんだよ」

私が教えると、光太はきょとんとした表情でこちらを見返す。

ちょうどそのとき、一台の車が私たちの横でゆっくりと停まった。滑らかな曲線が美しい、黒いセダンの高級外車だ。

「映美」

私たちが見守る中、春の日差しがキラキラと反射する車内から清都さんが降りてきた。

「こんにちは」
「こんにちは。光太、元気になってよかったな」

清都さんは膝を曲げてかがみ込むと、光太と目線を合わせてニコリと微笑む。

「行こうか、車に乗って」

ぽかんとして見つめ返す光太の頭をぽんとなで、後部座席のドアを開けた。

光太は二週間前に乗ったのを覚えているのか、おとなしくチャイルドシートに座った。
発進すると、キョロキョロとせわしなく周りを見ている。

「光太、元気そうだな」

運転席でハンドルを握る清都さんは、ルームミラーで光太の落ち着かない様子を確認し、目を細める。
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