月下の逢瀬
文化祭から一週間が経った日曜日。
あたしは家の近くにあるコンビニの駐車場にいた。

気分は重たく、快晴の空が恨めしい。
何度目ともしれないため息をついた。


あたしは今、片桐先生を待っているのだ。


『電話、かけておいで』


文化祭の時にそう言われたものの、あたしはできずにいた。
何をどう話してよいのかわからないし、先生から何を言われるのかと思うと不安になる。

理玖が来てくれた晩、全ての不安は拭われたような錯覚を起こしたけれど、実際は何も変わらない。
理玖の気持ちが少しでも分かっただけ、落ち着くところもあるのだけど。


『待ってるんだけどね?』


校内ですれ違いざまに言われた言葉に、みないようにしていた現実を知る。

躊躇った末に電話をかけたあたしに、先生は週末空けておくように言った。


『この間のコンビニにいて。迎えに行くから』


断る余地を与えない、強い言い方に、はい、とだけ答えた。

先生は、何のためにあたしを呼び出したのだろう。


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