月下の逢瀬
「あれ位いいよ。片桐先生に比べたらあたしなんてさー。
片桐先生、昨日めちゃめちゃかっこよかったんだよ!?」


思い出したのか、結衣がきゃーっと叫んで。


「真緒がふらっとあたしに倒れ込んできた途端、片桐先生が駆け寄ってきてね。こう、がばっとお姫様抱っこ!」


ジェスチャーを交えて興奮気味に話す。


「女子の殆どが叫んだんだよ。真緒、すっごい羨ましがられてたんだから」


ねえ? と近くにいた沙織に同意を求めると、何回も頷く沙織。


「ひょいって抱えたんだよね。かっこいいったらないよね、片桐」


「そう、なんだ。気付いたら保健室だったから、片桐先生が運んでくれたのもわかんなかった」


曖昧に笑って言うと、


「もったいなーい。って、具合悪いんだから当たり前か。
何にせよ、元気になってよかったね」


「んだんだ。それにあたしたちもいいもの見せてもらえたし、よかったわ」


二人ともにこにことあたしの顔を見た。


その笑顔に、ずきんと胸が痛む。

嘘をついてる自分が嫌だ。
心配してくれた結衣に、真実を隠してる自分が嫌。


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