月下の逢瀬
先生はそんなあたしに、笑いながら首を振った。


「ああ、別に気を使って声かけた訳じゃない。
そうだな、たまたまナンパしたのがうちの生徒だった、って感じかな?」


いや、それは問題か? と首を傾げる先生。
あたしはその言葉についくすくすと笑ってしまった。


「ナンパだったんですか? それは問題ですね」


「問題、か。やっぱり。
じゃあ、臨時教員の権力で、昼飯に付き合うように指示する、でどう?」


「え? 臨時教員に権力あるんですか?」


「ないか? とにかく、一緒にどう?」


柔らかな誘い方に、あたしはくすくす笑いが止まらないまま頷いた。


「あ、行ってくれる? ありがと」


「いえ、こちらこそです。お誘いありがとうございます」


二冊の文庫本を抱えて、あたしはレジを指差した。


「じゃあ、行きましょうか?」


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