【番外編】副社長の一目惚れフィアンセ ~詩織の物語~



「うーん……」


いなくなる前に、部屋の中を少し片づけたいと思ったけれど。

机の上も散らかっているし、引き出しもとにかくいろんなものが詰め込んであってカオス状態だ。


「つくづくズボラだな、私」


お母さんにさんざん注意されたけれど、さっぱり直らないままだった。

いや、でもこれがあまりに片付きすぎていると、それはそれでお父さんもお母さんも悲しくなるんだろうか。

このままのほうが『詩織らしいな』って笑ってくれるだろうか。

そういうことにしておこう。

机の隅に置かれた丸缶の貯金箱は、お小遣いの小銭をちょっとずつ貯めたものだ。

たいした額ではないと思うけれど、これは明里に使ってもらえるよう、ペンで『明里用』と書いておこう。

本棚に入った日記帳に手を伸ばす。

高校に入るときに買ったものだけど、まだ半分以上が白紙だ。

書いてあるページも小学生の一言日記と変わらない。

まあ仕方がない。なんせ現代文も赤点常連だったのだ。

長文なんて書けるわけがない。

パラパラとページをめくると、あちこちに直斗の名前が出てくる。

私の高校生活は、直斗なしではありえなかった。

直斗への想いも、思い出も、短い文章にたくさん散りばめられている。

2年半分のラブレターのようなものだから、この日記は直斗に遺すことにしよう。


―― 最後の1ページに、私らしくないちょっと長いメッセージを添えて。



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