愛よりもお金が大事。
「冬野、だから、もうこの話辞めない?」


そう言葉にしながら、フッている側の私の胸が痛くなる。
フラれたみたいに、泣きそうで。


「悪いけど、俺はもう後には引けないから。
そんな年収がどうとかの理由で、諦められるかよ」


冬野は私を囲い込むように、壁に両腕を付け、
そのまま私に顔を近付けて来る。


冬野の息が、鼻先に触れる。
息だけじゃなく、冬野の熱も伝わる。
その熱にこのまま溶かされてしまいたくなる。


「嫌なら、俺を押し退けて逃げろよ」


この言葉がきっと最終通告なのだろう。


「逃げないなら、遠慮しない」


逃げない私に、冬野は唇を重ねて来る。


こうやってキスしてみて、やっぱり私はこの人が好きだったのだな、と確信した。


こちらに歩いて来る人の気配を感じて、私と冬野はさっと身体を離した。


サラリーマンのような男性の二人組が私達の横を通り過ぎるが、
気を遣われたのか、私達のキスを見ていないようにこちらに視線を向ける事なく、通り過ぎた。


冬野はすぐに私を抱き締めて来る。
女にしては身長が高い私より、ほんの少し背の高い冬野。
私の耳に、冬野の吐く息が当たる。


「このホテルの部屋取ってる…」


先程聞いた台詞と同じような台詞だけど。
先程とは違い、それに鼓動がさらに強くなる。
言葉が出なくて、それを受け入れるように冬野の背に腕を回した。


< 17 / 96 >

この作品をシェア

pagetop