愛よりもお金が大事。




「…冬野、なんで黙ってたの?」


冬野家から出て、笑顔で私と冬野を見送るご両親の姿が見えなくなったら、直ぐに問い詰める。


「え、何を?」


うっすらと笑みが浮かんだ冬野の顔。


「その顔、分かってるでしょ?」


「多分、夏村は俺の家の事をちょっと違う風に思っているんだろうな?とは、気付いていた」


いや、ちょっとじゃなくて、全然違う。


「ただ、うちの母親の父親があけぼし商事の会長なのは、隠してた。
それは夏村に対してだけじゃなくて、会社の人間には。
会社内で知られたら、色々やりにくいし」


冬野があけぼし商事会長の孫なのだと知ったら、会社のみんなはこの人に気を使うだろうし、仕事上で冬野を利用しようと近付いて来る人も居るだろうな。


「じゃあ、うちの会社では誰もその事知らないんだ?」


「いや、岡崎社長は、知ってる。
岡崎社長はじいちゃんと仲良いから。
多分、副社長辺りも知ってるかな」


そう言われ、夕べの岡崎社長の言葉を思い出した。


"ーー二人が上手く行くように後押しして欲しいって、頼まれてて。
それは、恩を売っても損はない相
手だったからーー"


それは、あけぼし商事会長って事か。


そして、副社長が冬野の名前を覚えていたのも、そういう事か、と思った。


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