転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
でも逸生さんは優しいから、私に直接“白鳥さんと一緒に行動したい”なんて言わないと思う。
だったら私から二人きりにさせてあげるべきなのかも。
だって私は所詮本物の恋人ではないし、その反対に、白鳥さんは逸生さんの妻になるかもしれない人なのだから。
「専務、あの…」
“私は小山さんを探してきます”と嘘をついて、なるべく自然に逸生さんのそばから離れようとした。その時だった。
無意識に逸生さんの袖から離していた手に、再び熱が触れた。どさくさに紛れて私の手を握った逸生さんは、白鳥さんから私を隠すように一歩前に立った。
そして逸生さんは、目の前の白鳥さんではなくどこか遠くの方に視線を向けながら口を開く。
「あっ、あそこにいるの小山かも。すみません白鳥さん、ちょっと急ぐのでこれで失礼しますね」
「えっ、待って…」
逸生さんの唐突な発言に驚いたのは、白鳥さんだけではなく私も同じだった。
咄嗟に引き止めようとした白鳥さんの言葉を遮り「早くしないとまた見失う」と放ちながら強引に私の手を引く逸生さん。「専務!」と叫んだ白鳥さん手は、虚しくも空を切った。
あまりにも突然の行動にその手を振り払う余裕もなく、人波をかき分けながらどんどん進んでいく逸生さんの後ろを必死でついて行く。
そうしながらもチラッと後ろを確認すれば、白鳥さんの姿はもう見えなくなっていた。
そのまま少し開けた場所に出ると、逸生さんはやっと足を止めた。手を繋いだまま振り返った彼は、私の顔を覗き込むように腰を折り「ごめん、足大丈夫?」と心配そうに眉を下げる。