転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
はは、と吹き出すように笑った彼は「そのキャラ、ほんと面白いよな」と褒めているのかよく分からない言葉を放つ。
そして続けて「クール美女だから、ドMの男に特にモテそう」なんて言うから、思わず無駄に整った顔を睨み上げた。
「…え、何?どうした?」
突如顔を顰めた私に気付いた彼は、分かりやすく戸惑いの色を見せた。
そんな彼に鋭い視線を送りながら思ったのは、この男も結局、他の男と同じような目で私を見ているんだろうなってこと。
確かに彼の言う通り、私はドMの男に特にモテた。私が常に無表情だからか、みんな勝手にドSだと決めつけるのだ。
大学時代、父に内緒で初めて付き合った人は、付き合ったその日に「これで僕にお仕置きして」と、ムチと縄を持ってきた。あまりの衝撃に、その場ですぐにお別れしたのを覚えている。
その他、私のことを陰で女王様と呼ぶ人もいたし、踏みつけながら罵ってくださいと直接お願いされたこともある。
確かにキツい性格に見えるかもしれない。私が美しすぎるのか、逆らってくる人もあまり現れなかったし。
でも、見た目で判断されるのは、もうウンザリだ。
「…私はドSでもないし、ドM男は大嫌いです」
溜息混じりにボソッと呟けば、目の前の男は一瞬キョトンとした顔で動きを止めた。けれどすぐに私が怒っていると察したのか、眉を下げて笑うと「そんな怒んなよ。ごめんごめん」と謝罪した。
どうして人は、すぐ見た目で判断するのだろう。ほんといい迷惑だ。
だって私は、本当はドSどころかドMだ。さっき電柱で頭をぶつけた時も、痛さよりも気持ちよさが勝った。
それに父が自由人だからか、自由な人に振り回されるのも嫌いじゃない。なんだコイツとは思うけど、ドM男に比べたら魅力を感じる。
男は少しくらい強引な方がかっこいいと思ってる。まぁ、セクハラ上司は論外だけど。
ちなみにこの男の、あっさりと自分のペースに持っていくところ、実は嫌いじゃない。
あまり出会ったことのない人種に、ゾクゾクしている自分がいる。
本人には、口が裂けても言えないけど。